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奥穂高岳より | ||
回想 秋の槍穂高岳縦走 1966年10月8日〜10日 |
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ハイキングや登山を始めて、北アルプスに挑戦したのは、昭和41年(1966)秋のことだった。上高地から仰ぎ見る穂高岳の雄姿に感動をおぼえたのはその数年前と思う。いつかあの吊尾根を歩いてみたいものだと思っていた。 10月7日土曜日、大阪発18時7分の「彩雲」という夜行列車に乗り込んだ。当時は夜行で行って夜行で帰り、そのまま会社に出社するのが一般的だった。 8日夜中の2時47分、木曽福島駅で下車し、バスで上高地に入る。現在は、新島々からバスが出ているが、そのころ大阪から行く場合は木曽福島が出発点だった。 上高地に5時30分到着。気温は4℃だ。今回のパーティーは、3名でいつもハイキングに行っている仲間だ。登山準備をして7時、槍ヶ岳を目指して出発。これから長い長い行程が続くことになる。 明神・徳沢と順調に歩き、9時30分横尾に到着。壊れそうな橋を渡ると槍沢に入る。一ノ又に10時30分到着。ここで昼食にする。11時15分、一ノ叉を出発。 槍沢小屋に12時30分到着。槍沢小屋手前で少しきつくなったが、なんとかここまではマイペースで行動できた。これから約5時間、悪戦苦闘が続くことになるとは思ってはいなかった。 若い頃とはいえ、夜行での寝不足はこたえる。眠気が襲ってくると同時に足が上がらなくなる。やっとのおもいで殺生小屋に、16時到着。あと1時間ほどで槍ヶ岳だ。ここで泊まるか先に行くか悩んだが結局、槍ヶ岳まで行くことにした。 槍ヶ岳はすぐそこにあるのだが、歩いても歩いても近づかない。なんとも大きな沢である。一歩一歩の前進となる。100歩歩いて立ち止まりを続けながら進む。そのうちに、5歩歩いて立ち止まりになってしまう。日も落ち始めた。だんだん辺りが暗くなってきた。最後の力をふりしぼって、やっと槍ヶ岳山荘に到着だ。到着時刻16時55分。 |
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槍沢 近くに見える槍ヶ岳は遠い |
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9日、5時10分起床、すばらしい天気だ。ヘッドランプを点けて槍ヶ岳山頂に挑む。標高は3180m日本で5番目に高い。山頂でしばらくすると、明るくなりすばらしい光景が開ける。足元まで雲海が迫ってきて、まるで孫悟空の世界だ。常念岳が雲海を突き破ってそびえている。360度のパノラマを満喫した。 | ||
槍ヶ岳山頂にて |
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昨日のあの苦しさがこのすばらしいご褒美になるとは、なんとも誇らしくも覚えた。本当に苦しさを乗り越えて登ってきた甲斐があった。この景色は生涯忘れられない光景になった。いよいよこれから穂高岳の縦走が始まる。 大喰岳から中岳へと、槍ヶ岳の景色を振返りながら進む。槍ヶ岳の雄姿に引戻されそうな気持ちになる。 南岳を過ぎ南岳小屋に到着。いよいよこれから穂高岳縦走の核心になる。急な下りを梯子などを使って、大キレットに降りる。長谷川ピークを過ぎ、ナイフブリッジの稜線を信州側から飛騨側に乗り越す。 飛騨泣きで小休止。滝谷に吸い込まれそうな緊張の連続もやっと一息ついた。 |
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飛騨泣き付近にて |
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これから、最後の難関北穂高岳の絶壁を上がることになる。気を引き締めて、くさり・ピン・はしごなどを利用して、絶壁の壁を登る。ものすごいスリルだ。 北穂高山荘に着くやほっとする。緊張が和む一瞬だ。ヤッターという感じだ。ここで昼食にし、午後は涸沢岳を経て穂高岳山荘までの行程を行く。 |
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涸沢岳にて |
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10日早朝、涸沢岳で夜明けを迎える。アルプスの夜明けはすばらしい。穂高岳山荘の横の急な岩場を登ってしばらく歩くと、奥穂高岳の頂上に着く。 薄ら雪が積っていた。初雪が夕べ降ったようだ。標高は3190mで日本で3番目に高い山だ。ここから一望できる穂高連峰は最高だ。ここまで歩いてきた槍ヶ岳からここまでの道のりが一望でき、景色は格別だ。西穂高岳の稜線も美しい。ジャンダルムが印象的だ。 |
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奥穂高岳山頂にて |
奥穂高岳山頂にて |
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いつまでもここに居たいが、上高地まで下山しなければならないので切り上げて前に進む。前穂高岳の吊尾根を行き紀美子平へ。 ここでリュックをおろし空荷で前穂高岳の山頂に上る。山頂付近はあいにくガスでなにも見えない。少し残念だが下山することにした。 岳沢ヒュッテを経て岳沢を下り上高地に到着。楽しかった槍穂高岳縦走もこれで終わりだ。 バスは上高地から島々までだが、遅れたため電車に間に合わず松本まで運行してくれた。松本から夜行の「第2ちくま」に乗り、11日早朝、6時40分大阪の戻った。 天候に恵まれ、事故もなく槍穂高岳を縦走できて本当によかったと思う。初日の槍ヶ岳までの登りは、本当に辛かったが尾根に出てしまうとそこは大パノラマの別世界。この大パノラマを歩けるのも、あの登りの苦労があったからだ。まさに先憂後楽だ。 初めての大縦走だったが、男性的な穂高連峰は、山の虜になるきっかけになったと思う。 |
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コース 10月 7日 大阪駅(18:07)=<彩雲>= 10月 8日 =木曽福島駅(2:47/2:55)=<バス>=上高地(5:35) 上高地(6:58)〜明神(7:33)〜徳沢(8:25)〜横尾(9:25)〜一ノ叉(10:30/11:15)〜 殺生小屋(16:00)〜槍ヶ岳山荘(16:55) (泊) 10月 9日 槍ヶ岳山荘(5:30)〜槍ヶ岳山頂(5:50/6:15)〜槍ヶ岳山荘(6:40/朝食/7:28)〜 南岳小屋(9:25/9:40)〜大キレット〜北穂高小屋(12:25/昼食/13:20)〜 穂高岳山荘(16:00) (泊) 10月10日 穂高岳山荘(5:10)〜涸沢岳(5:30/6:10)〜穂高岳山荘(6:50/朝食/7:21)〜 奥穂高岳(8:10/8:40)〜紀美子平(9:55)〜前穂高岳(10:20/10:40)〜 岳沢小屋(13:30/昼食/14:10)〜上高地(16:00/16:50)=<バス>= 松本駅(20:20/23:18)=<第2ちくま>= 10月11日 =大阪駅(6:40) <車中2泊・小屋2泊> |